すいみんせいかつ


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開国


 長く扉を閉じている時間はひどく心浮かれるものであった。
 鎖国、といっても、全く外部と接触を断ったわけではない。
 上司の元には阿蘭陀から様々な知識やものが入ってきていた。
 日本はあまり外部の人間と接するのが得意ではなかったため、直接話したことはないが、上司と話をしているところを見たり、あるいは上司が買った品々や話を聞くことはよくあった。しかしそのどれもが日本には遠く。
 ーー不思議、だ、
 外の世界のことなんて。
 日本はぼんやりと思いを馳せる。
 日本にはない技術や知識、工芸品。
 私よりもずいぶんと先に進んでいるのでしょう、とは思うが、実感は無い。
 今や、昔は憧れ、真似ばかりしていた中国ですらも遠く感じた。
 取り残されている、という感覚が無かった訳ではない。
 なんといっても日本は国なのであり、これでいいのか、とも時には思うこともあったが、そのほとんどは何の形になることもなく陽炎のように消え去る。日本にとって、外の世界は自分とは関係の無いものであった。それが果たして正しいことであるのかはわからない。あるいは、国として間違った姿なのかもしれなかった。外に出ればより強い力を手に入れられるとわかっているのに、怠っている。国の発展を願う身としてはそのように糾弾されれば言い返すことなどできないだろう。しかし、それは平穏な世界ではあった。
 江戸はある程度の平安を守っていたし、聞こえよく言えば、日本はその平安を乱したくなかった。それに、花開いた様々な文化を、日本は愛していた。
 他に、何が必要なのだろう、と思う。
 文化があり、ある程度の平安があり(もちろん全く何もおこらない訳ではないが、戦乱の世を見てきた日本にとっては比較的安定しているように思われた)、食べ物にも困ってはいない。
 だから日本はずっと閉じこもって暮らした。
 上司に一つの家をもらって(城をやると言われたが断固拒否した)、慎ましやかに町民たちと暮らす。
 それは非常に楽しい日々だったのだが。

 「日本!!まっくろな船が来たよ!見たことも無いぐらい大きくて、あれは本当にふねなのか??鉄なんだ、鉄が浮いてる!!」
 「日本、開国を求められている、どうにかして断りたいが、断れるような雰囲気ではない、それに敵対するとこちらがやられてしまう、」
 「日本、どうしよう、どうしたらいい!?」
 「日本!!」

 あっけない幕切れであった。
 引きこもりの日本は無理矢理上司によって、他国と対面させられる。
 ずいぶん背の高い南蛮人であった。
 目を合わせずに様子を伺おうとするが、瞬間、顔を覗き込まれる。
 「はじめまして!僕はアメリカ!君は?ずいぶんちっちゃいねえ。君、国だよね?」
 矢継ぎ早に話しかけられるのに、顔をあげざるをえず、日本はやっとのことで、
 「はじめまして、日本です・・・。」と言った。
 そして驚く。まるで硝子玉のような目の、澄んだ空色。
 「あ・・・。」
 「ん?なんだい?なんでも言っていいんだぞ。僕たちはもう友達なんだから、遠慮はいらないんだぞ!!」
 「あの、その色・・・。」
 「色?」
  怪訝そうに言われ、日本ははっと我に返る。
 「いえ、すみません。その、あまりに貴方の瞳の色が美しかったので。その、貴方のところの方はみなそのような色なのですか?」
 「いや、みんなではないよ。いろいろかなぁ、茶色のやつもいるし・・・、あ、緑のやつのいるんだぞ!」
 「緑、ですか。」
 想像をして、少しうっとりとする。緑の目。目の色が違うと国民たちは気味が悪いと思うようだが、日本は純粋に美しいと思う。そして、日本は綺麗なものが大好きなのだった。
 「今度会わせてあげるよ。僕らはもう友達なんだから、遠慮することはないんだぞ!」
 亜米利加と名乗る若者はまた同じ台詞を繰り返し、明るく笑った。
 日本はつられるように微笑んでから、ああ、終わった、と思う。
 ーーさようなら、私の引きこもり生活。
 あんな若造に国力の差を見せつけられたからには、負ける訳にはいくまい。
 残念ながらあんなに愛した江戸も、もう変わってしまうのだろう、と寂しく思いながら、一方で新しい時代の幕開けに心躍るのも事実であった。






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