すいみんせいかつ


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Please,please,kiss me again


「もう、いいから。よく頑張ったな。」

顔をのぞき込まれ、ひどく優しい声で言われた瞬間、抑えてきた何かがぷつりと切れてしまった。
堰を切ったように涙が溢れてくる。取り繕う暇もなかった。いつものようににっこりと笑顔の鎧で返そうと思ったのに。守りきれる自身はあったのに。どうしてこんな時だけそんなに敏感で優しいのだろう、兄さんは。反則だ、と思う。

止めよう、止めようと思えば思うほどに感情は募るばかりで治まらず、胸がずきずきと痛んだ。咽には熱い塊がある。けして溶けないと思っていたものが解けていく、解け始めればそれはあまりにも長い長い糸で巻き取ることもできない、ひたすらに遡っていく苦しさは止められない。くるしくなんかなかった、かなしくなんかなかった。だってボクは今こんなにも幸せじゃないか、これ以上何を望むと。

そう思ってもまるで何かが壊れてしまったように泣いていた。
子供の頃以来だった。
そう、だってボクは長らく泣くことさえ出来なかったので。
しゃくりあげると息が苦しい。
恥ずかしくて、隠すように俯くとあやすように背中をたたかれた。頭に触れる大きな手。

「全くどうしてお前はここまで我慢するんだか、昔から。」

低い声は先ほどのように怒りを含んだものではなかった。呆れた調子でもない。
ただひたすらに優しい声音だった。引き寄せられて、落ち着く体温。

(だってほんとうに何にもないから)
(だいじょうぶだから)

そう思うのに。
優しくされるほどに悲しくなってしまう。止まらない。

「守ってやれなくてごめんな。」

苦しそうに言う声に、ただただ首を振る。

泣き疲れて眠ってしまっても、兄さんの腕の中にいた。

ただそこだけが、世界中で唯一安心できる場所だった。






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