すいみんせいかつ


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lostdays



夢を見た。
この世のどこにもアルがいなくなって、世界中を旅して回る夢だ。
どんなに探しても、アルはいない。
それでも、必死になって探し回る。
リゼンブール、リオール、セントラル・・・。旅したところ全部。
そのうち国の外までも。
でも、わかっている。
そんなことをしてもアルは見つからない。
何処にもいないってことぐらい、オレは知ってる。
知ってるのに、諦めきれなくて、オレは探し回っている。

オレを助けるために、アルは消えた。
つなぎとめていた魂すら手放して、空気に溶けた。
真理に奪われた、わけじゃないと思う。
あいつの魂は本当はもうずっとずっと前から自由で、オレが最後の力を振り絞ってこの世に繋ぎ止めていた。愛しい弟。たった一人の肉親。
けどもう、あいつはもう、どこにもいない。

オレなんかのために、何故アルが消えなきゃならないんだよ!!

そう叫んでも、アルは答えない。
いや、あいつは笑ってこう言うような気がする。


「僕にはここの方が合っているんだよ、ほらこんなに軽い。」


空耳のはずなのに、いつまでも幼いその声はオレの耳にずしりと響く。


「兄さんも早く、僕から自由になって生きてよ。」


ずきずきと痛み出すのは失った右手だ。
アルを取り返すためなら身体の何処だって差し出していいと思ってた。そして持って行かれた右手。
それでも魂しか取り戻せなかったけれど。

ぐらりと傾いた身体で居間へ行く。
そこにはアルそっくりの青い目をした青年が光を背にして立っている。

「あれ、・・・起きたの、エドワ」
「兄さんって呼べ。」
「は?」

呆れた顔をしているのはわかっている、顔など上げられない。こうしていつだって同居人に甘えている、でも、時々やりきれなくなるくらい不安が膨らむとこうして頼ってしまう。

「なぁ。」
「・・・"兄さん"、どうしたの。」

同居人の優しい声はアルのものとは違う。
透明な光のように明るかったアルの雰囲気とはまた別の、そよ風のような優しさで、このアルフォンスはオレを呼ぶ。宥めるような穏やかな声。

「悪ィ。・・・・・・ちっとだけ、」
「しょうがないなぁ。」

ぎゅっと抱きつくと温かい身体。
アルが長い長い間失っていたもの。
左胸に耳を当てればどくどくと鳴る鼓動。その音を暫く聞いているとホッとする。


――こいつを通して。

オレはアルフォンスの目を見ずにぼんやりと思う。
まだあの夢の重苦しい不安がオレの中に残っている。

――こいつを通して、アルはオレを見ることがあるのだろうか。

いつかのオレのように。
こっちの世界で焼け死んだオレそっくりの少年のように。

「エドワードさん。」

終わりにする声すら優しい、この同居人はひどく澄んだ目でオレを見下ろす。
見なくてもわかる。
だから、オレはふいと目を合わせずに身体を離す。
傾いだ身体は寝起きだとあまり言うことをきかない、かつての機械鎧よりずっとヤワなこの義肢は。

「悪かったな。・・・目ぇ覚ましてくる。」

転びそうになって掴んだ洗面台、見上げれば金の瞳、アルとお揃いの。
お前はまだあの世界にいるのか、ちゃんといるのか、オレが帰るまで、いてくれるのか。

冷たい水に浸す手。
不安は覚醒する程にはっきりと大きくなる。


いや、違うんだ、お前さえ生きていてくれればそれで、
――それも違う、そうじゃない、、オレはただ、




――アル、お前に会いたい。














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