すいみんせいかつ


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RESET


その赤い塊をようやく手にいれることが出来たのは、旅をはじめてから随分長い年月がたってからだった。
兄さんの髪は腰まで伸び、伸び悩んでいた背も今では父さんぐらいになっている。
ウィンリィもすらりと背の高い、のばした背筋が綺麗な女の人に成長した。
ボクの鎧にも傷が増えた。随分、たくさん。

ようやく手に入れたそれは、けれども兄さんの手足と、ボクの身体全てを構築するには足りなかった。
それで、案の定、言い争いになった。
兄さんの手足が先だ、やっぱりそちらの方が負担が大きいのだから、と言うボクに、兄さんは全力で反対する。
おまえはあの身体を見てないからそんなこと言えるんだ、早くしないと死んでしまう。遅いぐらいだ、早くしないと。そう、兄さんは言った。怖いぐらいにまっすぐな目で。
頭に血が上った時の目じゃなかった。驚くほど落ち着いていた。
だからボクは黙るしかなかった。自分にいいわけをして。

――ボクが身体を取り戻したら、兄さんも少しは休んでくれるかもしれない。
――どんなに言ってもきかなかったけど、少しはペースを落としてくれるかも。
――今はまだ大丈夫だけど、このままだと絶対からだによくないもの。そのうち壊れてしまう。
――それにまだこれから旅をしていける。これからだって時間はあるんだから。

固い鎧の身体。
もうボクはこの身体に慣れていたけれど、まだ戻りたい願望は熱く胸の中に残っていた。
だってこ今のボクは人間じゃないから。
この気持ちも人間のものじゃない、ってことになる。
鎧の身体で、何を感じるというの?
鎧の身体で思ったことが、人間の感情って呼べるの?
何に触れることも出来ない、眠ることも出来ない……。
もう、触れる、という感覚も忘れてしまった。

(人間になりたい、人間になりたい。)



今のボクには、兄さんが考えていることがわからない。
それは、ボクが人間じゃないからなんだ。
人間に戻れば、あるいは。



毎日そんなことばかりを思った。
瞼の無い目で兄さんと同じものを見つめながら。



(人間になりたい、人間になりたい。)



ずっとずっと、そればかりを願った。












そして、今に至る。
二人で綺麗に描いた錬成陣。その真ん中に、ボクは赤い石を抱いて座った。
錬成は二人で行うことに決めていた。
目を合わせる。
息を合わせるのに、言葉など必要ない。
手を合わせて、祈るように。



ぱん。
どこかで何かが弾けるような音が聞こえた。
それが、最後の記憶だった。






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