すいみんせいかつ


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切片1 (無題、あるいは)



ほんとうはもう、ずっと昔に心など壊れてしまっていたんだ、と気づいたのは最近のことだった。
心なんて壊れることなど無い、と思っていたのだけど。信じていたのだけれど。
それは違った。ボクの心はどうしようもないほどに壊れていた。粉々だった。
喩えてみれば鏡の破片。たくさんの物事をつなげて感情を生みだすことが出来ない。
それを知ったとき、愕然とした。そして同時に、一生演技をしていかなければならないことに戦いた。
もちろんそんな感情などすぐに消え失せてしまい、気づけばひどく冷静な頭でどれだけの間兄さんを欺けるだろうと考えていた。
どれだけ?何ヶ月か、一年か、はたまたこんなにも兄さんのことが好きで、何もかもを知っているボクならば一生気づかれないように振る舞うことが出来るだろうか?








時計の針が一周する間考え続けていたら、ウィンリィがやってきて、苦しそうな顔でボクを抱きしめた。

「――ねえ、アル。壊れるって、どういうことだと思う?」

静かな問いかけ。耳元で、優しい声がくすぐったかった。

「もう二度と、元に戻らないこと。不可逆な事物。」

「どうして、どうして――」

「お願いだから、あきらめたりしないで。」



コップに入れた氷が、音をたてて動いた。

ボクが身体を取り戻してから過ごす、二回目の夏のことだった。






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