すいみんせいかつ


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つめたい指先2



「しつこいよ!」

言われた言葉に固まっているうちに、アルはいつの間にか消えていた。バタン、と勢いよく玄関の戸が閉まる音。浮かせた腰を、再び落ち着ける。読みかけの新聞に目を滑らせながら、けれども最早内容など頭に入ってこなかった。

「・・・なんだって、アルはあんなに学校に固執するんだ・・・?」

理解するスピードなんて人それぞれなのに、一斉に行われる授業。それも、基本的なことしか教えないと来ている。面白くないことこの上ない。
それでも、友達がたくさんいるから楽しい、というのならいいのだ。もちろん、アルは人なつこくてすぐに誰とでも仲良くなるから、それも理由の一つではあるだろう。でも、それだけじゃない。何か、しなければいけないものの一つとして勉強を位置づけている節がある。
必要以上に学校の勉強をしているし(オレから見ればそんなものに時間を裂くなんてそれこそ無駄なこととしか思えない)、今日のように自分の身体よりもテストを優先する。

――現に昨日だって・・・。

眠ったのは明け方だったと知っている。アルが一体どうしてそんな時間まで起きていたかは知らないけれど、無理矢理やめさせられるような雰囲気じゃなかった。そんなことをしたらまたあいつは意地を張るから。

アルは生まれつき身体が弱い。病弱、というわけではないのだが、ちょっとしたことですぐに体調を崩す。外部の刺激に過敏だ、とでも言えばいいのか。中でもやっかいなのが呼吸器で、温度差や風邪による咳だけで拒否反応を起こし、気道が収縮して呼吸困難に陥ってしまう。
発作を止める薬もあるにはあったが、一般に処方される薬では刺激として受け取られてしまうため役に立たず、結局オレがアルの薬を調合していた。
オレが早々に大学を卒業して博士号をとったのも、アルの身体にいつなにがあっても助けてやれるように、というのが理由の一つにあった。実際、とってからは楽に薬が手に入るようになったから、心底とって良かったと思っている。
そんなことが理由でとっとと大学を卒業したと知ったらまたあいつはまた怒るかもしれないけど。

――なんでわかってくれねーんだよ・・・・・。

こんなに心配しているのに。本当に、寿命が縮むから無茶するのだけは止めて欲しい。
オレの望みは、アルと二人、静かに暮らしていくこと、それだけなのに。

ふと、触った額を思い出した。ほんのりと、あたたかい体温。確かに、熱はなかったかもしれない。でも抑えきれず零れていた咳。寝不足と体調不良で、青白い顔。

――本気で大丈夫なのか?アル・・・・・・。

最近大きな発作はなかった。でも油断は禁物だ。体調を崩している時ほど大きな発作が起こりやすくなる。今発作が起こればかなり大事になるはずだ。

調合済みの薬の在庫を調べておこうと席を立った。寝ていてもすぐに取り出せるよう、薬はベッド脇のキャビネットに仕舞われている。かがみ込み、そのキャビネットを開けて、驚いた。

――発作時の薬が、ほとんど無くなってる・・・・・・?

考えられることはただ一つだった。オレが寝ている間、もしくは留守の間にアルは何度も発作をおこしていたのだ。

――アル・・・・・・!!

ざぁっと体中の血が引いた。否が応でも連れ戻してやろうと立ち上がったとき、目にとまったのはアルがいつも持ち歩いている、薬ケース。

――あいつ!薬まで忘れていきやがったっ!!






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